Part2:Wikiを設置してみよう
Chapter.5 Wikiを始めるには
PukiWikiを使うことに決めたら、次にインストール先を選択しましょう。ここでは、インストール先の候補となるサーバの種類と特徴を説明します。
読者の皆さんは、必ずどこかのプロバイダと契約してインターネットに接続していると思います。プロバイダが提供する接続サービスには、ホームページ公開サービスが付属している場合が大半です。これを利用してPukiWikiを設置できないか考えてみましょう。
プロバイダのホームページは、プロバイダのサーバのホームディレクトリにあります。ユーザは各自のホームディレクトリにHTMLやCGIなどのファイルを転送してホームページを公開します。PukiWikiも一種のホームページ作成文書なので、転送するだけでOKです。しかし、PukiWikiはPHPスクリプトで構成されているので、PHPの利用が許可されていなければなりません。この対応状況はプロバイダによって異なるので、契約しているプロバイダに確認してください。PHPが許可されているなら、PukiWikiをインストールすることも可能です。ただし、下の表のように、ほとんどのプロバイダではPHPが許可されていないのが現状です。
"@homepage"
PHP不可
Perl可能、PHP不可
PHP不可
PHP不可
プロバイダ以外のホームページ公開サービスとしては、レンタルサーバが挙げられます。このサービスには、複数のユーザで1台のサーバを使用する共用型(シェアリングサービス)と、サーバ1台丸ごと借り受けるホスティング型の2種類があります。ホスティングは商用など多くのアクセスがあり、かつ信頼性を重視したWebサイトに適しており、年間100万円単位の維持費を要します。これに対し、共用型は多くのユーザがディスクスペースやネットワーク帯域を共用し、処理や接続速度などのパフォーマンスとレンタル金額のコストを分配するサービスです。どちらのタイプも有料だけに使用可能言語は一通り揃っていて、PukiWikiを含め、さまざまなCMSを設置することが可能です。
個人でPukiWikiをレンタルサーバにインストールする場合は、共用型のレンタルサーバを利用するのが一般的です。以下の表に、日本語で契約できる主なレンタルサーバサービスを掲載しました。全体の傾向として高機能ほど料金が高いのは、サーバの償却と設置場所の優劣によることだと想像されます。自分のやりたいことをよく考えて、コストパフォーマンスの高いレンタルサーバを選びたいものです。
月々1,575円~
(KDDI)
月々3,990円~
月々315円~
月々4,200円~
月々1,050円~
月々1,050円~
共用サーバ
月々3,360円~
Service
月々892円~
レンタルサーバ
月々125円~
月々1,050円~
レンタルサーバ
月々315円~
上記のレンタルサーバのほかに、無料のレンタルサーバが存在します。これらの無料レンタルサーバはユーザWebページに広告が掲載され、その広告収入がサーバの運営費にあてられています。サイト中(ヘッダ部分・フッタ部分)に広告があっても気にならない人には、大変お得なレンタルサーバとなっています。ただし一部のサーバでは、サーバ側で広告掲載のためにフッター情報の書き換えなどがあることに注意が必要です。以下に人気の無料レンタルサーバを紹介します。
レンタルサーバでは、多くのユーザと同じサーバを共用します。極端に言えば、1台のコンピュータの性能やネットワーク接続を「ユーザ分の1」だけ使うということです。現実的には、時分割という処理によって極端にパフォーマンスが落ちることはありませんが、アクセスが集中する夜間や休日などのピーク時には覚悟しなければなりません。また、共有サーバなので、充分に安定したものを設置しなければ他のユーザの迷惑になることもあります。
この点、自宅サーバの場合はインターネットの帯域はプロバイダとの契約分はフルに利用が可能で、しかもサーバをすべて独占できます。また、実験的なサーバの運用も他のユーザへ迷惑がかかることはありません。PukiWikiの動きを手元に置いて徹底的に観察するのにはうってつけです。
ただし、自宅サーバでのPukiWikiの運用は、OSの問題や、ポートフォワードの設定、外部からのアクセスするためのアドレスの問題が解決されていなければなりません。
基本的に、PHPを利用したプログラムはPHPスクリプトを実行可能であればOSを問わないのが原則です。しかし、PukiWiki自体がWebサーバ「Apache」を基本に考えられているので、Apacheが稼動できるOSが推奨されています。とは言え、ApacheはグローバルスタンダードなWebサーバですから、サポートの困難さを無視すれば、ほとんどのOSにインストール可能とも言えるでしょう。
OS以上に大切なのが、PHPのバージョンです。現在最新のPHPのバージョンは5.1.1です。しかし、PukiWikiの動作確認がされているのは、PukiWiki1.3.xがPHP4、PikiWiki1.4.6がPHP4/5です。インストールするPukiWikiがどのバージョンのPHPと対応しているのかを確認する必要があります。
筆者がおすすめするOSは、Linuxサーバです。最新のLinuxディストリビューションは、Apache1.3.xまたはApache2.xが標準のWebサーバとなっており、いずれもデフォルトでPHP4以上が組み込まれています。すなわち標準インストールしたLinuxであれば、PukiWikiを運用することができることになります。
そのほかのOSには、Windows XP/2000/2003サーバなど、IIS(Internet Information Service)やApacheが動くMicrosoft社のOSがあります。これらのOSにはPHPがインストールされていないので、新たにインストールする必要があります。本書では、Windows XPを例にPHPとPukiWikiのインストール手順を紹介します。
PukiWikiに限らず、自分のホームページにインターネットからアクセスするには以下の条件を満たしていなければなりません。
①Webサーバが起動し、外部接続用ポートでアクセスを待機していること
②サーバが起動しているパソコンのファイアウォールに、Web接続要求が許可されていること
③LAN内において、WebサーバのIPアドレスが固定化され、LAN外からの接続要求がWebサーバに転送されること
④ルータやゲートウェイでのファイアウォールに、Web接続要求が許可されていること
①はPukiWikiのインストールが成功して初期画面が確認されれば問題ありません。②のファイアウォールは、第7章を参照してください。もし、PukiWikiを運用するパソコンがインターネットに直接接続しているなら、③、④はありません。
家庭内LANなどLAN(Local Area Network)を構成していると、外部からはLAN自体が1つのコンピュータ(端末)として認識されます。その端末がルータ(家庭内LANではブロードバンドルータ)です。インターネットからのWeb接続要求はまず、このルータが受け取ります。もしWeb公開していない設定なら、この要求を無視してリジェクト(破棄)します。逆に、公開しているサーバがあれば、その要求をWebサーバのアドレスまで転送します。これがポートフォワードと言われるものです。③がポートフォワード、④はWeb接続要求を選択的に受け入れるファイアウォールの役割で、ともにルータの機能の1つです。機能がなければ、ルータの場所にサーバを設置しなければならなくなり、インターネットにサーバが直接接続されている状態、つまり①と②だけの非常に危険な接続状態です。
ポートフォワードの設定はルータによって異なりますので、詳しくは付属の取扱説明書を参照してください。
自宅サーバをインターネットからアクセスする場合は、IPアドレスを知らなければなりません。この場合のIPアドレスとは、インターネットから自宅サーバを特定できるグローバルアドレスに限られます。もし、CATVなどでローカルIPアドレスを配布されている場合は、自宅サーバを立ち上げることができません。
IPアドレスは、LANの場合はブロードバンドルータの設定画面で、直接接続の場合はコマンドプロンプトでipconfigと入力すれば知ることが可能です。しかし、固定アドレス契約をしていない限り、IPアドレスは変化する場合があります。毎日、IPアドレスを確認して、閲覧ユーザに接続先を指定することなど不可能です。こういったときのためにダイナミックDNSサービスがあります。
ダイナミックDNSサービスとは、「www.myhost.org」というように、「サーバ名.ドメイン名.ドメイン組織名」という構成の文字列からIPアドレスへ変換してくれるデータベースサーバのことです。通常は、固定IPアドレスをもつサーバのためにありますが、ダイナミックDNSサービスは、名前の通り動的(ダイナミック)に変化するIPアドレスに対応したサービスです。ダイナミックDNSサービスをしているサーバにアクセスするだけで、自宅サーバのIPアドレスとドメイン名を関連付けし、ドメイン名でのアクセスが可能となります。以下に日本語で設定できる主なダイナミックDNSサービスを示します。
- Chapter.1 Wikiって何?
- 1-01 Wikiの仕組み
- 1-02 Wikiでできること
- 1-03 Wikiは何に使えるの?
- Chapter.2 Wikiを始めるには
- 2-01 livedoor Wikiに新規登録する
- 2-02 livedoor Wikiの初期設定をする
- 2-03 livedoor Wikiにテキストを入力する
- 2-04 livedoor Wikiのテキストを装飾する
- 2-05 livedoor Wikiのテキストをリスト表示する
- 2-06 livedoor Wikiで表を作成する
- 2-07 livedoor Wikiでリンクを張る
- 2-08 livedoor Wikiに画像を表示する
- 2-09 コメントやトラックバックの機能を利用する
- Chapter.3 Wikiをカスタマイズするには
- 3-01 Wikiの設定を変更する
- 3-02 Wikiのデザインを設定する
- 3-03 Wikiのプラグインを設定する
- 3-04 Wikiのメンバーを追加・管理する
- Chapter.4 Wikiをもっと便利に使うには
- 4-01 Wikiでアフィリエイトを行う
- 4-02 Wikiのアクセスを調べる
- 4-03 Wikiの更新を知るには
- 4-04 その他のWikiを使うには
- Chapter.5 Wikiを設置する
- 5-01 どのWikiを選べばよいか
- 5-02 どこにインストールするかを決める
- 5-03 レンタルサーバにPukiWikiをインストールする
- 5-04 Windowsサーバにインストールする
- 5-05 Linuxサーバにインストールする
- Chapter.6 PukiWikiのカスタマイズ
- 6-01 PukiWikiの見た目を変える
- 6-02 PukiWikiのプラグインを使う
- Chapter.7 PukiWikiのメンテナンス
- 7-01 PukiWikiのバックアップとバージョンアップ
- 7-02 PukiWikiをプライベートで閲覧する
- 7-03 PukiWikiをWindowsサーバで安全に使うには
- 7-04 PukiWikiをLinuxサーバで安全に使うには
- 7-05 PukiWikiを便利に使うためのツール